「インドネシアで大規模なデモが発生しているらしいけど、旅行予定があるけど大丈夫?」
「現地在住の家族は無事?デモはいつ収まるの?」
そんな不安や疑問を抱える方も多いのではないでしょうか。共同通信の報道によると、インドネシアでは国会議員の高額手当問題を発端とする抗議デモが全土107カ所にまで拡大。これまでに10人の死者も出ている状況です。しかし一方で、政府は沈静化に動き出し、観光地バリでは「正常に戻った」との声明も。
本記事では、現地の最新状況や日本人への影響、政府の対応を分かりやすくお伝えします。デモの背景から旅行者や在留者が知るべき情報まで、しっかりと解説していきます。
107カ所で拡大する抗議デモ 国会議員の高額手当が発端
インドネシア全土で抗議デモが激化しています。ティト内相が9月2日に発表したところによると、デモは全国107カ所にまで拡大。発端は、国会議員への高額な手当支給が決定されたことに対する国民の強い不満です。
💰 高額手当とデモ発生の背景
国民の怒り: この手当は、低所得者層向けの政策を推進する一方で教育予算が削減されているといった状況や1、生活費の高騰、格差、失業問題などに対する長年の不満に火をつけました。国民は「政治家の自己保身」「汚職体質の象徴」として強く反発しています。
問題の住宅手当: 国会議員に月額5000万ルピア(日本円で約45万円) の住宅手当が支給されていることが批判の対象となりました1。これにより議員の月収は1億ルピアを超えるとみられ、その額はインドネシアの年間最低賃金の約10倍に相当します。
デモの広がりと市民の怒り
デモは首都ジャカルタだけでなく、地方都市にも急速に拡大しています。
西ジャワ州では、デモ参加者が地方議会庁舎の門に竹の棒を投げつけ、火を付けるなどの激しい行為に及びました(ロイター=共同)。
23都市では庁舎や公共施設の破壊が確認され、治安部隊との衝突も発生。
デモ参加者の主な要求
- 高額手当の撤回
- 資産没収法案の即時成立(汚職対策として有効とされるが、20年間議論が停滞)
- 物価高騰や失業率の改善といった経済政策の見直し
現地の状況
- ジャカルタ中心部ではバス停が放火され、黒焦げの跡が生々しく残っています。
- 警察と軍の計6,000人以上が国会周辺に配備され、市内の警戒も強化されています。
- 一方、観光地であるバリ島では州知事が「正常に戻った」と声明を出し、観光客への安心をアピール。
このデモは、単なる一時的な抗議ではなく、政治腐敗や経済格差という根深い問題を浮き彫りにしています。政府は早期の沈静化を目指していますが、市民の怒りは収まる気配を見せていません。
🔥 デモの暴徒化と悲劇的な事件
抗議の広がり
デモは8月25日ごろからジャカルタをはじめとする主要都市で学生を中心に発生し、その後全国107カ所に拡大しました。当初は平和的だった抗議活動は次第に激化し、暴徒化する様相を見せ始めます。
ひき逃げ死亡事故
8月28日、デモ現場周辺で悲劇的な事件が発生しました。警察の機動隊装甲車がバイクタクシー運転手の男性(21歳)をはねて死亡させる事故が起きたのです。地元メディアが報じた映像によれば、速度を上げて走る機動隊装甲車が男性を背後からはねた後、一時停止したものの、通行人が制止する中、車は前進して走り去った様子が映し出されました。この事件がデモ激化に決定的な拍車をかけ、抗議の矛先が政府だけでなく警察にも向けられることとなりました。
暴徒化と衝突
死亡事故を受け、デモはさらに激化し、8月29日には暴徒化したデモ隊と警察が各地で衝突しました。地方議会の建物が放火されたり、財務大臣や国会議員の自宅が略奪・襲撃される事件も相次いで発生。警察は催涙ガスを使用して解散を命じるなど、厳しい対応を取りました。
被害状況
各地の暴動で少なくとも10人が死亡したと報じられています。また、950人以上が拘束されており、事態の深刻さが伺えます。現在も治安部隊による警戒が続けられており、状況は依然として緊張した状態が続いています。
大統領の緊急対応と約束
プラボウォ大統領は抗議デモの沈静化に向け、緊急の対応に追われています。9月1日、大統領は労働組合代表らとの会合を開き、デモ参加者が強く求めている資産没収法案の成立に取り組むことを約束しました。この法案は、犯罪で得たと疑われる1億ルピア(約90万円)以上の資産を没収できる内容で、汚職対策として有効視されています。
大統領は「国民の声に耳を傾ける」と表明し、早期の法案成立をアピールしました。しかし、この約束がデモ収束にどの程度効果を持つかは不透明です。
深刻化する被害と治安対策
抗議デモは暴徒化し、これまでに計10人が死亡する悲劇的な事態となっています。治安部隊によると、23都市で庁舎などの公共施設が破壊され、ジャカルタ中心部ではバス停が放火され黒焦げの状態が残っています。
治安当局は事態の深刻さを受け、警察と軍あわせて6,000人以上を国会周辺に配備。市内の巡回も強化し、さらなる混乱の拡大に備えています。しかし、デモ参加者と治安部隊の対立は続いており、緊張状態が続いています。
観光地バリの「正常化」宣言
一方、観光地として人気の高いバリ島では、バリ州政府知事が9月2日、「バリは正常に戻った。安全で平和だ」とする声明を発表しました。観光客に対し、安心して訪れるよう呼びかけています。
しかし、この声明とは裏腹に、政府とデモ側の対立は根本的に解決しておらず、状況は予断を許しません。観光業関係者からは「宣言だけで実際の安全が保障されるわけではない」との慎重な見方も出ています。
20年間停滞する汚職対策法案
資産没収法案は実に20年近くも議論が停滞してきた経緯があります。汚職対策として有効視される一方で、政治家や富裕層からの反対が強く、実現のめどは立っていません。
政治アナリストは「今回の約束はデモ鎮静化のための一時的な措置に過ぎず、実際に法案が成立するかは疑わしい」と指摘。国民の間にも「また空約束ではないか」という懐疑的な見方が広がっています。
先行き不透明な情勢
プラボウォ大統領は資産没収法案の成立約束によりデモの沈静化を図ろうとしていますが、その実現可能性は低いとの見方が優勢です。政府与党ですら法案成立に消極的だとも報じられています。
国民の不満の根底には、政治家の特権体質や汚職問題への怒りがあります。これらの根本的な問題に取り組まない限り、真の解決は難しく、状況は予断を許さない状況が続きそうです。
【緊急】インドネシア渡航・在留者へ デモ情勢における安全対策と注意事項
🚨 現在の状況
インドネシアでは、国会議員の高額手当問題を発端とする大規模な抗議デモが全土で発生しており、一部では暴徒化、治安部隊との衝突により死者も出ている状況です。情勢は流動的であり、今後さらに拡大する可能性もあります。
📍 渡航予定の方へ(旅行者向けアドバイス)
- 渡航の是非を慎重に判断してください
- 外務省の危険情報や安全情報を随時チェックしてください。
- 特にジャカルタなどの大都市部への不要不急の渡航は、当面見合わせることを強くお勧めします。
- 既に旅行計画がある場合、旅行会社に状況を確認し、中止や延期も検討しましょう。
- バリ島について
- バリ州政府は「正常化」を宣言していますが、情勢は予断を許しません。
- 観光地中心部は比較的落ち着いている可能性もありますが、デモは突然どこで発生するかわかりません。
- のんびりとしたバリのイメージとは異なる緊張状態があることを十分に認識し、渡航する場合は細心の注意を払ってください。
🏠 在留邦人の方へ(在留者向けアドバイス)
- デモ発生地域には絶対に近づかない
- 国会議事堂、地方議会、政府官庁周辺、主要な広場や幹線道路はデモが発生する可能性が特に高いです。
- たとえ好奇心でも、絶対に現場に見に行かないでください。催涙ガスや投石、偶発的な衝突に巻き込まれる危険があります。
- 情報収集を徹底する
- 在インドネシア日本国大使館が提供する「たびレジ」や「在留届」に登録し、最新の安全情報を入手してください。
- 現地のニュース(Jakarta Post, Kompas等)やSNSの情報にも注意を払い、お住まいの地域の状況を把握しましょう。
- 生活上の準備と注意
- 数日分の水・食料・燃料・医薬品を備蓄しましょう。デモの影響で外出困難になったり、店舗が閉鎖したりする可能性があります。
- 不要不急の外出は避け、特に夜間の外出は極力控えてください。
- 交通機関が麻痺したり、道路が封鎖されたりする可能性があるため、移動には余裕を持って計画を立てましょう。
- 緊急時の連絡先を確認
- 大使館、職場、家族の連絡先をすぐに確認できる状態にしておきましょう。
- 000(警察)、119(救急)などの現地緊急通報番号も控えておいてください。
📞 緊急時の連絡先
- 在インドネシア日本国大使館
- 電話: +62-21-3192-4308(代表)
- 担当領事部員携帯: +62-811-887-315(緊急時のみ)
- 在デンパサール日本国総領事館
- (Consulate General of Japan in Denpasar)
- 住所:Jl. Raya Puputan No. 170, Renon, Denpasar Selatan, Kota Denpasar, Bali 80239, Indonesia
- 電話番号(代表):+62-361-227-508
- 緊急時(事件・事故・傷病など)の24時間対応携帯電話:+62-811-397-911
- FAX:+62-361-265-066
- メールアドレス:jpconsul@dj.mofa.go.jp
- 外務省 海外安全ホームページ: 随時最新情報を更新しています。
- 現地緊急通報番号: 警察 110、救急車 118 または 119(地域によって異なります)
インドネシアの抗議デモに関するQ&A
- Qインドネシアではなぜ抗議デモが起きているのですか?
- A
インドネシアのデモは、政府の政策変更や汚職問題、生活費高騰、労働法改正、選挙関連の不満などが主な理由です。学生団体や労働組合、市民グループが中心となって抗議活動を行うことが多いです。
- Qデモはどこで行われることが多いですか?
- A
首都ジャカルタが中心で、大統領宮殿(イスタナ)や国会議事堂周辺が主要なデモの場所です。また、スラバヤ、バンドン、メダン、バリ島などの大都市でも同様の抗議活動が見られます。デモはどこで行われることが多いですか?
- Q今日のデモ情報はどうやって確認できますか?
- A
現地メディア(Kompas、Detik.comなど)や国際ニュース(BBC、CNN)、SNS(TwitterやInstagramのハッシュタグ #JakartaProtest など)で最新情報を入手できます。旅行者は在インドネシア日本大使館や外務省の海外安全ホームページを確認すると安心です。
- Qバリ島でもデモはありますか?
- A
バリ島は観光地として知られていますが、地方政府の政策や観光開発に対する抗議デモが行われることもあります。ただしジャカルタほど大規模ではなく、旅行者に大きな影響を与えることは比較的少ないです。
- Qデモの際に気をつけるべきことは?
- A
デモが予定されている場所には近づかないことが基本です。交通が遮断されることもあるため、移動ルートを事前に調べておきましょう。また、写真や動画を無断で撮影するとトラブルになる場合があるので注意が必要です。
- Q「インドネシア デモ ワンピース」という検索結果は何ですか?
- A
これは抗議デモ時にワンピースのどくろの旗を掲げる若者がいます。インドネシアではアニメや漫画の人気が高く、SNS上で抗議デモ関連ワードと一緒にトレンド入りすることもあります。
- Qスラバヤでのデモの特徴は?
- A
スラバヤはインドネシア第2の都市で、学生団体や労働組合によるデモが頻繁に行われます。交通規制や商業エリアでの集会があり、ジャカルタ同様に注目される都市のひとつです。
💡 まとめ
- 基本は「近づかない」「関わらない」が鉄則です。
- 情勢は毎日変化しています。油断せず、最新の情報を入手し続けることが最も重要です。
- 少しでも不安を感じたら、無理をせず自宅待機をし、安全第一の行動を心がけてください。
現在のインドネシアは平時とは異なる状況です。自分自身の安全は自分で守るという意識を持ち、慎重に行動してください。

インドネシアおよびバリ島の人々に笑顔が一日も早く戻るように願っています。
コメント